マハの呪いを例に……アイルランドに擬娩の習慣があった、だと?

2017年11月4日

書名
『擬娩の習俗』(The Custom of Couvade)
著者
ワーレン・アール・ドーソン Warren Royal Dawson
訳者
中西定雄

という本を図書館で借りて読んだので、メモっておきます。
もし原文でもオッケーでしたら→ Google Books

クーヴァード(Couvade)という言葉は、最初タイラーによって、人類学上の術語として、分娩と関連した一連系の諸習俗を支持すべく使用された。
これらの習俗は、子供の父が、子供の出産当時あるいはその以前又は産後のある期間、自分の床につき、節食に服して、しかも、その妻ではなくて、彼が分娩の苦痛を受けているかのごとく、一般に振舞うべき事が必要としている。その完全な形態においては、擬娩を遵奉する夫は、自分の床について、産褥にいるふうをし、時には、呻いたり、顔をしかめたりすることによって、分娩の諸々の苦痛を真似ることさえし、また時には、その妻の衣類を着ることさえある。床にある間、彼は贅沢をさせられて、数々の御馳走で養われ、赤ん坊を育てて、その縁者たちや友達のお祝いを受ける。しばしば、誕生前のある期間及びある実例では、彼の妻の妊娠の当初から、その夫は厳格な節食に服して、過激な仕事あるいは武器類や道具類を手にすることを避けて、狩猟、喫煙及び他の娯楽を断つことを要求される。

男子産褥ともいうらしいですね……?

サイプラス島とアイルランドの場合

で、この中で、 多くの国の擬娩の実際の場合の考察をしてゆく前に、特別の考察を要する二つの場合があるとして、 サイプラス島(Cyprus)と、アイルランド(Ireland)を挙げています。

多くの国の擬娩の実際の場合の考察をしてゆく前に、特別の考察を要する二つの場合がある。なぜなら、これらは、宗教的儀式の性質を帯びており、そして宗教的儀式として、子供の実際の誕生に際して、ただ個々の夫たちが行っている擬娩の慣習的な形態とは、全然違っているからである。

で、著者が摘要したと言っている箇所が次。中身はアレ、マハの呪いのアレ。

 競争が始まった。そして、王の馬が決勝点に達した時、マカはすでに到着していた。その場で即刻、その馬の頭の下で、彼女は息子と娘との双子を産んだ。そして、その場所は、それ以来「マカの双子」(Twins of Macha[Emain Macha])として知られて、永くアルスターの首府になった。彼女の分娩の刹那に、マカは大きな叫びをあげた。それを聞いたすべての人は、一種の呪力にうたれた。彼らは、その一生に一度、出産の苦痛を、五日四晩あるいは四日五晩、悩むよう運命づけられた。これは「アラツ人の九夜の週間」(The Nine-night Week of Ulates)と呼ばれた。この期間、男たちは、分娩の際の女と同様に、力がなかった。そして、この不思議な苦痛が、父から息子に、九代にわたった。ただ英雄クーフリン(Cuchulainn)のみが、この呪詛から免れた。叙事詩の女王メブ(Medb)が、アラツ人の王国(アルスター)に侵入して、主たるアイルランド叙事詩の主題である戦争を始めた時、アルスターのすべての戦士は、彼らの予言された呪詛で苦しめられて、戦うことが出来なかった。クーフリンが唯一の例外であったが。

この注目すべき物語は、明らかに神話的起源のものである。その男たちに強いられた擬娩は、暴行された女神の自分への悪行に対する復讐であった。

マーカーで示した部分、一応原文も。

During this period the men had no more strength than a woman in travail, and this strange affliction passed from father to son for nine generations.The Custom of Couvade

父から息子に九代続く呪い、ってなってるんですけど、それだと、うん、クーフリン全く関係ないな……。ついでに、一緒にトーイン中動きまわってたロイグはというと、炎の戦士クーフリンだと、NOTアラツ人です。実際どうなんでしょう。ロイグの出自はとても気になりますね。

ロイグは牛争いで殺されたレンスターの貴族の息子で、自分の身に何が起こったのかわからないほど幼かったころに、人質としてコノール王のもとに連れてこられた。この地で育つうちに、自分がアルスターの生まれでないことなど忘れてしまったらしい。『炎の戦士クーフリン』 ローズマリー・サトクリフ著

気を取り直して次。急に俗信・迷信っぽくなってきたぞ……?

英国諸島における擬娩の習慣は、今なお、一般に行われている次のごとき信仰に残っている。すなわち、女の妊娠あるいは分娩が、その夫に感応し、しかも前者は、後者が、それに悩むのに比例して、苦痛から救われる、という事である。這般(しゃはん)の信仰は、近年に、オックスフォードシャア(Oxfordshire)、チェシャア(Cheshire)、ヨークシャア(Yorkshire)及びその他の地方から記録された。そして、類似の諸観念が、『結婚した男の歯痛』(married man’s toothache)にまで退化し、それについて、多くの実例が、提供され得た。スコットランドの北東部では、もし夫が、結婚の翌朝、真っ先に起きるならば、彼は、妻の分娩時に、出産のすべての苦痛を負うだろう、という信仰が今なお残留している。しかし、我々は、これらの朧ろげな慣習よりも、もっと明確な擬娩の証拠を有する。例えば、スコットランドにおいては、十八世紀に、及び恐らくその後も、乳母は母から父に、出産の諸苦痛を随意に移し得る、と信ぜられた。これは、一つの新しい要素、すなわち、妖術を導入しているものであるが、擬娩の伝承は明瞭である。トーマス・ペナント(Thomas Pennant)は、1772年ダムフリースシャア(Dumfriesshaire)なるラングホルム(Langholm)への訪問のことを書いて、次のごとく述べている。『産婆たちは、我々の最初の大母に与えられた原始の呪詛の一部を、善良な妻からその夫に移す力を有した。私は、こうした産苦から生まれた評判のある子に会った。その子は、母にはほとんど不安を与えずに親切にこの世に生まれて来たが、夫の方が可愛そうにも苦悶で呻き、そして異様なしかも不自然な苦痛にあったのである。』類似の実修がアイルランドから記録されている。その所では、母になることの諸々の苦痛が、母から父に、乳母によって移され得る、と信ぜられた。乳母は男から取った衣類を呪術的に利用して、母に着せ掛けるのである。『ある者は、夫の同意がまず得られねばならない、と主張しているが、一般の意見は、夫はその原因を知らないで、すべての苦痛を感じ、苦悶のあまり大声をあげさえする、というのである。』

 擬娩の伝承を保存しているアイルランドの古い一つの言い慣わしがある。『貴方たちは、間もなく、老女と一緒に床について養われねばならぬだろう。人々が昔やった通りに。』ドナルド・エー・マッケンジー(Mr.Donald A. Mackenzie)は、スコットランド山地(Highland)の一つの言い慣わしで、今なお、ときどき聞かれる『女はその苦痛を男に負わせよ。』というのを、私に知らせている。

 最後に、我々は、1884年の出版に現れた次の珍奇な場合を引用してもよい。『我々は、最近に、疑念をさしはさむ余地のない一つの出所から、ヨークシャアのその地方における「擬娩」に、はなはだ類似した一実修の残存物について聞いた。私生児が生れる時、その父を明かさないのが、娘には名誉に関する重大事である。しかし、その娘の母は、直ちに、父を探しに出かける。そして、彼女が、床についているのを見る最初の男が、父である。』

なんだか、調べたら結構色々な話が引っかかりそうですね……ヨーロッパ以外の話も載ってます、むしろ多分そっちがメインなんでしょうけども……。マハの子供がどうなったかとかも知らないことに気が付きました。

アイルランド伝説による二日酔い対策

訳の分からない迷信?といえばこういうのもある。
ギズモード・ジャパンの『古今東西の変わった二日酔い対策、19個 : ギズモード・ジャパン』という記事で紹介されていたアイルランドの二日酔い対策が意味不明だった。

アイルランドの伝説によれば、首まで濡れた川の砂に埋まるというのが二日酔い対策です。アイルランドは暖かい国ではないので、濡れた川の砂は体を冷やします。冷たいシャワーみたいな効果がありそうです。目を覚まし、血流を良くしてくれそうです。これが頭痛と吐き気を治してくれるっている医学的な見解はないですけどね。

この伝説の元がわからないんですよね……どれなんだろう?

Profile
avatar-image
櫟野もり(Ichino Mori)

ゲームばかりしながらアイルランド神話関係の雑記を書いたりしている。
今やってるのは「FGO」と「FF15」。

ブログのことで何かあればtwitterまでどうぞ!