人物紹介:ロイグ・マク・リアンガヴラ Loeg mac Riangabra(アイルランド神話・赤枝説話群)

2018年6月21日

赤枝説話群における最愛キャラクターは、クー・フリンの御者ロイグ。
ローズマリー・サトクリフの『炎の戦士 クーフリン』(原題:The Hound of Ulster)では、クー・フリンから御者の王、My King of Drivers と呼ばれています。

随時更新中。

名前の意味について

ロイグ(Loeg)

ライグ この名前は「子牛」を意味する
キアラン・カーソン, 栩木伸明 訳 『トーイン クアルンゲの牛捕り』 東京創元社(2011)

eDILによると、mac, macc のページにこんな記述がある。

laeg m. a young calf: mac (.i. bec) laog, LL 393a45 (term of endearment?). 1 mac, macc. eDIL - Irish Language Dictionary

親族について

兄弟

イヴァル(Ibar)

クー・フリンがセタンタと名乗っていた頃の御者。コンホヴァル・マク・ネサ の御者だった。

イヴォル 「イチイの樹」を意味する名前
キアラン・カーソン, 栩木伸明 訳 『トーイン クアルンゲの牛捕り』 東京創元社(2011)

エーン(Sedlang)

エーン 「鳥」を意味する名前
キアラン・カーソン, 栩木伸明 訳 『トーイン クアルンゲの牛捕り』 東京創元社(2011)

『ブリクリウの饗応』では ロイガレ・ブアタハ の御者として登場。

カーソン『トーイン クアルンゲの牛捕り』では コナル・ケルナハ の御者として登場している。

「ちょっと見ておくれよ、わが友ライグ、アルスター軍の戦いぶりはどうかな?」
「勇敢に戦っています」と御者が返した。「コナル・ケルナハの御者をつとめるエーンとわたしがもし、このいくさの衝突地点の片翼からもう片方の端まで戦車を駆って横断するとしたならば、戦車の車輪も馬のひづめも、地面につくことはないでしょう。両軍はそれほど接近して戦っています」(p.282)
キアラン・カーソン, 栩木伸明 訳 『トーイン クアルンゲの牛捕り』 東京創元社(2011)

イド(Id)

『ブリクリウの饗応』では コナル・ケルナハ の御者として登場。

Joseph Dunn による『クアルンゲの牛捕り』では、p.257 で Id mac Riangabra が、クー・フリンと一騎打ちすることになる フェルディア の御者として登場している。

ロイグの両親か? Riangabair と Finnabair

The Exile of the Sons of Doel the Forgotten(Longes mac nDuil Dermait) という話の中に、ロイグの親らしき人物、RiangabairFinnabair が登場する。

レディ・グレゴリーの Cuchulain of Muirthemne(1902) にも一応、「XVI. SONS OF DOEL DERMAIT」 として収められているのだが、リアンガヴラの名前は出ていない。

私がロイグの両親の存在を読んで知ったのは以下の文献から。

John Arnott MacCulloch & Jan Máchal, “The Mythology of All Races/Volume 3 (Celtic and Slavic)” , Marshall Jones Co. Boston (1918)

こちらの方が見やすいか? → The Mythology of All Races/Volume 3 (Celtic and Slavic) - Wikisource, the free online library

With Loeg and Lugaid he captured the ship of the King of Alba’s son, who gave him a charm; and thus they reached an island with a rampart of silver and a palisade of bronze, while on it was a castle where dwelt a royal pair—Riangabair and Finnabair—with three beautiful daughters. These welcomed them, because Loeg was their son;
The Mythology of All Races(Vol.3) (Celtic and Slavic) (1918)

because Loeg was their son の部分で、ロイグが彼らの息子であることが明かされている。

In the morning Cuchulainn gave a ring to Etan, one of the daughters, who had slept with him
The Mythology of All Races(Vol.3) (Celtic and Slavic) (1918)

クー・フリンはさらりとロイグの姉妹かもしれない女性に指輪を与えたりしないで欲しい。

W Stokes, E Windisch : Irische Texte : mit Wörterbuch

上記の文献には、p.164 から「Das Fest des Bricriu und die Verbannung der Mac Duil Dermait」が入っている。(※ドイツ語)

出自について

レンスター出身?

ローズマリー・サトクリフの『ケルト神話 炎の戦士クーフリン』では、ロイグの出自はアルスターではなくレンスターということにされている。

ロイグは牛争いで殺されたレンスターの貴族の息子で、自分の身に何が起こったのかわからないほど幼かったころに、人質としてコノール王のもとに連れてこられた。この地で育つうちに、自分がアルスターの生まれでないことなど忘れてしまったらしい。ローズマリー・サトクリフ, 灰島かり 訳 『ケルト神話 炎の戦士クーフリン』 ほるぷ出版(2003)

両親はトゥアサ・デ・ダナン

ロイグの父親はトゥアサ・デ・ダナーンとディロンの『古代アイルランド文学』にある。

リアンガバル(その息子レーはクー・フランの戦車手である)、センナハ・シアボルセなどは、その名がしばしば登場してくる妖精たちである。(p.100)マイルズ・ディロン, 青木義明 訳 『古代アイルランド文学』 オセアニア出版社(1987)

妖精たちとしてあるが、同書227頁では注(20)においてレーの父親リアンガバルはトゥアサ・デ・ダナーンであった。とはっきり書いてある。

参考文献