『ケルト神話ファンタジー 炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』ローズマリー・サトクリフ(筑摩書房)

2018年7月31日

既に一部の界隈では定番となった感じの、ローズマリー・サトクリフによるアイルランド神話の再話ですが、改めて紹介。
元々ほるぷ出版から出ていた『ケルト神話 炎の戦士クーフリン』と、『ケルト神話 黄金の騎士フィン・マックール』を一冊にまとめて文庫にしたもの。

リンク 筑摩書房 ケルト神話ファンタジー 炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール / ローズマリー・サトクリフ 著, 灰島 かり 著, 金原 瑞人 著, 久慈 美貴 著

残念ながらこれは在庫がないようだ……『炎の戦士クーフリン』『黄金の騎士フィン・マックール』、元々ほるぷ出版から出ていたもののAmazon中古価格も高値になっているので、……いや理由はわかるんですが……。
図書館に行けば見つかることもあるだろうから、借りて読んでみてはいかがでしょうか。

 

アイルランド神話の二大英雄クー・フリンとフィン・マックール、この二人にどんな話があったのか。サトクリフによる再話によって「小説のように」読みやすく語り直されているのでとっつきやすいと思う。

目次を読む

炎の戦士クーフリン 灰島かり訳

  • はじめに
  • 第一章 デヒテラ姫の贈り物
  • 第二章 武者立ちの儀
  • 第三章 跳躍の橋
  • 第四章 女領主アイフェ
  • 第五章 クーフリンの初めての襲撃
  • 第六章 クーフリンの結婚
  • 第七章 ブリクリウの大宴会
  • 第八章 アイルランドの英雄争い
  • 第九章 ディアドラとウシュナの息子たち
  • 第十章 メイヴ女王の出撃
  • 第十一章 浅瀬の攻防
  • 第十二章 フェルディアの死
  • 第十三章 牛争いの結末
  • 第十四章 やってきたコンラ
  • 第十五章 カラティンの魔女娘たち
  • 第十六章 クーフリンの最期
  • 第十七章 『勝利のコナル』の復讐

黄金の騎士フィン・マックール 金原瑞人・久慈美貴訳

  • はじめに
  • 第一章 フィンの誕生と少年時代
  • 第二章 クールの息子フィン
  • 第三章 フィンとフィアンナの騎士たち
  • 第四章 フィンと『若い勇士』の子どもたち
  • 第五章 フィンと灰色の犬
  • 第六章 アシーンの誕生
  • 第七章 ガリオン山脈の追跡
  • 第八章 ジラ・ダカーと醜い雌馬
  • 第九章 フィアンナの名馬
  • 第十章 ナナカマドの木の宿
  • 第十一章 ディアミッドとグラーニア
  • 第十二章 黄金の髪のニーヴ
  • 第十三章 ディアミッドの死
  • 第十四章 ガヴラの戦い
  • 第十五章 アシーンの帰還

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  • 訳者あとがき 金原瑞人・灰島かり
  • 解説 伝説の英雄から等身大の人間へ 井辻朱美

それぞれ「はじめに」にはちょっとした著者による解説がある。

再話というかたち

サトクリフによって語り直された物語であることを初めに念頭に置いて読む。自然の描写なども美しいし、登場人物たちも好感が持てて可愛らしい。クーフリン、ロイグ、エウェルの三人が特に好きだ。

多少、再構成する際にサトクリフによる変更もあるのかもしれない。削除されたところや、追加したところもそうだ。しかしそれが独自の物語になっているので、読んでいて面白い。いや、理解しやすい、というのか。

『炎の戦士クーフリン』から気に入ったところをひとつだけあげるとすると、「このまま行こうが引き返そうが同じだ。おれの運命はもう決まっている」クーフリンは言った。その声も目も、突然狂気からさめたように、彼本来のものにもどっていた。といって、自分がこのまま戦いに行けばどうなるか承知していて、御者であり友であるロイグに対して、自分と別れて妻エウェルのもとに戻ってくれてもいい、と言ったクーフリンに対するロイグのセリフが好きで好きで仕方ない。

「わざわざ言わなくても、彼女は分かっている。おまえの運命は、ずっとおれの運命でもあった。いまさら変えることはできない」ロイグはこう言うと、馬をなだめて水の中を進めた。

これ、原文だと ‘She knows without telling of mine,’ Laeg said. ‘Your Fate has been mine too long to change the way of it now,’ and he steadied the horses down to the water, となってます。

彼女(エウェル)は自分の言葉など必要なくとも、クーフリンのことは分かっている、というロイグはエウェルのことを分かっているのだから、彼らはとても仲が良かったのだろうか。

クーフリンの最期のところでは、彼の本名であるセタンタの名前の意味が「道を進んでゆく者」なのを感じる。それにロイグの友達ぶりがいい。ロイグは最期までクーフリンに付き添った。

この記事で紹介した書籍一覧

 

  • ローズマリー・サトクリフ, 灰島かり 訳, 金原瑞人, 久慈美貴 訳 『ケルト神話ファンタジー 炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』 (ちくま文庫) 筑摩書房(2013)
  • ローズマリー・サトクリフ, 灰島かり 訳 『ケルト神話 炎の戦士クーフリン』 ほるぷ出版(2003)
  • ローズマリー・サトクリフ, 金原瑞人, 久慈美貴 訳 『黄金の騎士フィン・マックール』 ほるぷ出版(2003)