ドルイドの話をしよう:死後の世界で現世の借金を返済する?

2018年8月15日

来世があるわけないだろ! って方に、「あの世で返すのでお金貸して」って言っても多分貸してもらえないですね。
踏み倒す気MAXにしか思えないので私も貸さないです。

なんでこんなこと書いてるのかって?

ぼく
ぼく
ケルト関係の本読み返してたら、そんな話があったから……。

霊魂不滅の思想?

鎌田東二, 鶴岡真弓 編著 『ケルトと日本』(角川選書, 319) 角川書店(2000)所収の、井村君江「ケルト神話の宇宙観──ドルイドを中心にして」を読んでいたらこんな記述。

この世と同じ生活が、死後もそのまま続き、人々は同じ生を生きると考えていたことは、死者の所持品だけでなく宴会のための道具を埋めたという埋葬品から、また死後の世界では現世の借金を払うという話などからも窺うことができる。(p.53)

死後の世界では現世の借金を払う……!? ってなりました。
……それでいいのか? いや、それでお金貸してくれるんですか……?!

現代からしたらとても驚きの話ですねぇ……。いや、現代からしたら、ではなく、古代の著述家も驚いたから書き残しているのでしょうけども。

スチュアート・ピゴット, 鶴岡真弓 訳 『ケルトの賢者「ドルイド」 : 語りつがれる「知」』 講談社(2000)

こちらも読んでみたけど、「死後の世界では現世の借金を払う」エピソードは誰が書いてるんだっけ……となる。ポンポウニス・メラ……か?

幸い、ポンポニウス・メラは邦訳がありました。

飯尾都人 訳編 『ディオドロス神代地誌 ; ポンポニウス・メラ「世界地理」 ; プルタルコス「イシスとオシリス」』 龍溪書舎(1999)

流石に古書で買うのは財布が厳しいので、今度図書館で探してみようと思います(`・ω・´)ゞ
あ、来世で返すのでどなたか奇特な方がお金貸してくれるなら買いたいですが。冗談です。

※2018年5月31日に引用を追記。

一九 知恵の教師ドルイダイと死後の生の教え

 これら教師は、大地と宇宙の大きさと形、天空と星の運動、諸神が何を欲するか、を知っていると称する。そして、族民のなかで最も優れた人びとに数多くの知識を、秘密のうちに長い間すなわち二〇年もかけて教え、教える場所は洞窟や隠れ谷である。
 教師たちが一般の人びとの間へ教え広めている教説のひとつが、知れ渡っていて、これはあきらかに、人びとを戦闘にあたって一段と勇気ある兵にするためだが、それによると、魂は何時までも存在し、死者たちにはもうひとつの人生がある。従って、死者を火葬や土葬にする折、生きている人びとの役に立つ品を添える。昔は取引勘定や債権取立てまで冥界へ持ちこんでいたし、なかには自分の一族の誰かが火葬になる折さえ、死者といっしょに(冥界で)暮すつもりででもあるかのように、喜んで薪の山へ身を投じるものまでいた。

ポンポニウス・メラ 飯尾都人訳『世界地理』 3巻 1章2節
飯尾都人 訳編 『ディオドロス神代地誌 ; ポンポニウス・メラ「世界地理」 ; プルタルコス「イシスとオシリス」』 龍溪書舎(1999)

死後の世界はどんな世界?

死後の世界のことをさっきまで「来世」と書きましたが、「来世」だとちょっと違和感があるかもしれない。

「他界」、或いは 「異界」 と言い表した方がしっくりくるんじゃないでしょうか。

ルカヌスが『内乱記』で汝らの歌に耳を傾ければ 死は長い生の中継点にすぎないというのなら、この世とそのままの生があの世で続くのであれば、死とは「同じ生をこの世とは別の場所で過ごす」ということであって「生の終わり」ではない。(『ケルトの賢者「ドルイド」 : 語りつがれる「知」』 p.206)

ましてや、死んで「無」となるわけではありません。

だからカエサルが『ガリア戦記』の中に書いているように死者が生前大事にしていたものを墓所に入れる、ってことになるんでしょうねえ。戦車や武器なども墓所から見つかっていますが、戦争もすると考えていたのでしょうか。

しかし、こんな教えがなされていたとして、引越し先がどんな場所なのかは気になるんじゃないか。
どんな「他界」だったのか……(´・ω・`)

他界に行った人の話として日本の浦島子や、アイルランドの航海譚(イムラウ)の主人公たちを取り上げているものがありました。

アイルランド神話で、異界に行って帰ってくる人の話なら『ネラの異界行』 The adventures of Nera (Echtra Nerai or Táin bé Aingen) が面白いなあと思っています。

リンク ネラ (コナハト戦士) - Wikipedia

記事で紹介した図書一覧

  • 鎌田東二, 鶴岡真弓 編著 『ケルトと日本』(角川選書, 319) 角川書店(2000)
  • スチュアート・ピゴット, 鶴岡真弓 訳 『ケルトの賢者「ドルイド」 : 語りつがれる「知」』 講談社(2000)
  • 飯尾都人 訳編 『ディオドロス神代地誌 ; ポンポニウス・メラ「世界地理」 ; プルタルコス「イシスとオシリス」』 龍溪書舎(1999)