『フランスの神話と伝承』篠田知和基(勉誠出版)

2018年8月21日

どうも、櫟野もり(@1no_mori)です!

フランスにも神話はある!……というわけで、ガルガンチュアとメリュジーヌ、そしてガリアの話が目当てで買ってみました。

結果: 大変勉強になります本当にありがとうございました。

序章でフランスの歴史や風土、など基本的な説明があるのでよかった。
……いや、私あんまりフランスについてよく知らないので、ですね。

特にガリアの神々の話が興味深かったです。グンデストルップの大釜の解釈とか、そういう読みの試みができるのか……と、興奮しました。

あと文学神話について触れてるので、原作を改めて読んでみたくなりました。

リンク フランスの神話と伝承 : 勉誠出版

レリーフから物語を読み解く試み

大陸ケルトの神々についてデンマークのゴネストルップ(グンデストルップ)から出土した大鍋のレリーフから読み解けるの?……と疑問は感じたのですが、ひとまず読み進めてみると、

研究者のアットはゴネストルップの鍋のレリーフをリガニとエズスの物語として読み解こうとしている。

と初めの方に書いてあって、「あれを物語として読み解くの???」と、好奇心をそそられてしまった。

グンデストルップの大釜というのはデンマーク国立博物館に所蔵されていて、画像もウェブサイトから見ることができます。下のリンクからどうぞ。

リンク The Gundestrup Cauldron

エズスというのはここでは「豊穣の神」とされていて、リガニというのは「アテナ=ミネルヴァに相当」と説明されています。アットの解釈の中で、エズスはケルヌンノス(鹿神)の姿にもなるようだ。

リガニはタラニス(ユピテルに相当、天空神・雷神)の妃で、タラニスと別れてエズスと一緒になろうとする。から始まる物語なのですが、恣意的な解釈であると筆者が留保しつつも、レリーフを物語として読み解くという行為を面白いと感じました。

ガリアの神々についてももっと知りたいですね。

巨人の話が面白い

巨人っていろんなのがいるんですね!? と、まあ、無知を晒してしまいますが。

ガルガンチュアの話なんて「こんな話なの?」って笑いながら読んでました。ガルガンチュアの誕生がメルラン(マーリン)の仕事? とか、アーサー王ネタが突然出てきてびっくりしながら、ラブレーの『ガルガンチュア』『パンタグリュエル』は近いうちに読まないとなと決意。

これはいいカリカチュアの予感がする……。

巨人に興味を持ってしまったせいか何かの運命なのか、この本を読んだ後で『進撃の巨人』にはまりまして……今更だけど! ……『進撃の巨人』って神話っぽいな、と思ってたら北欧神話に素材を取ってるんだって、いまさら知りました。

メリュジーヌ伝説

水浴びしているところ見たらダメ、ゼッタイ。見るなのタブーの典型ですね。

ざっと解説してあるのですがメリュジーヌのタブーである「土曜日に自分の姿を見ない」を破ったレモンダンはメリュジーヌの下半身が蛇になった姿を見て驚くが、「そもそも室内で水浴びしてるのに驚いたのでは?」っていうのは考えたことがなかったので面白かった。

なお室内での水浴が例外的だったことは、メリュジーヌの水浴にも見てとれる。彼女は土曜ごとに室内のたらいに水をくんで体をあらっていた。そのとき下半身が蛇になっていた。それを見てレモンダンが驚いたのだが、蛇である以上に、室内で水浴をすることが珍しかったのかもしれない。(p.36)

リュジニャン家の始祖譚なのですが、話の全体が読みたい場合、講談社学術文庫からクードレットの話が松村剛[訳]で『西洋中世奇譚集成 妖精メリュジーヌ物語』として出ています。あとはジャン・マルカルのものが邦訳されていますね。

何気なくアーサー王ネタというかアヴァロン島が出てくるので本腰入れてアーサー王関係勉強しないといけないのかなと思い始めています。

イスの町伝説

そういえばFate/GrandOrderの1.5部、アガルタの章にもダユーが出てましたね。ダユーの元ネタがこれです。

最近ラ・ヴィルマルケの『バルザス・ブレイス』が翻訳されたし、この本でもイスの町伝説が取り上げられてて嬉しい今日このごろ。ちょっと分量が少なかったのでイスの町についてもっと知りたい方はシャルル・ギヨの小説の翻訳があるので……と言いたいんですが、絶版。残念です。

先に上げた『バルザス・ブレイス』、アナトール・ル=ブラースの『ブルターニュ 死の伝承』に入ってますので是非読んで……。

アンベール=雨宮裕子 『蒼海の母神』異文化研究 6, pp75-88, 山口大学人文学部異文化交流研究施設(2012)

講演録が公開されてたのですが、イスの町にもメリュジーヌにも触れていて面白かったです。

目次を読む

はじめに

序章

  • 1 フランスの歴史
  • 2 神話と民間伝承
  • 3 魔女と錬金術
  • 4 フランス人の心性
  • 5 フランスのフォークロア

Ⅰ フランスの国土

  • Ⅰ-1 森
  • Ⅰ-2 石
  • Ⅰ-3 泉
  • Ⅰ-4 沼沢地、荒蕪地
  • Ⅰ-5 山

Ⅱ 古いフランスの神々

  • Ⅱ-1 ガリア(ケルト)の神々
  • Ⅱ-2 ガロ・ローマの神々
  • Ⅱ-3 ピレネの神々
  • Ⅱ-4 スイス神話
  • Ⅱ-5 白鳥の騎士(ゲルマン神話)

Ⅲ 巨人たち

  • Ⅲ-1 ガルガンチュア
  • Ⅲ-2 ガルガンチュアとドラゴン
  • Ⅲ-3 人食い鬼・青髭、小人
  • Ⅲ-4 巨馬バヤール
  • Ⅲ-5 ガリアのヘラクレス

Ⅳ 蛇女神

  • Ⅳ-1 メリュジーヌ
  • Ⅳ-2 ヴイーヴル
  • Ⅳ-3 水の精
  • Ⅳ-4 イスの町
  • Ⅳ-5 異類婚説話

Ⅴ フランスの妖精

  • Ⅴ-1 鵞鳥妖精
  • Ⅴ-2 産育妖精
  • Ⅴ-3 中世説話の妖精(ランヴァルほか)
  • Ⅴ-4 アリおばさん
  • Ⅴ-5 アボンド奥方

Ⅵ 妖怪

  • Ⅵ-1 人狼
  • Ⅵ-2 ドラック タラスク
  • Ⅵ-3 婬夢魔
  • Ⅵ-4 トリックスター
  • Ⅵ-5 メニ・エルカン 呪われた狩り

Ⅶ 聖人説話

  • Ⅶ-1 悪魔のロベール
  • Ⅶ-2 ベアトリス
  • Ⅶ-3 ギニュフォール 霊犬伝承
  • Ⅶ-4 マルティヌス
  • Ⅶ-5 クリストポロス

Ⅷ 文学神話

  • Ⅷ-1 ジル・ブラース
  • Ⅷ-2 守銭奴
  • Ⅷ-3 マノン・レスコーまたは宿命の女
  • Ⅷ-4 異邦人
  • Ⅷ-5 星の王子

おわりに
参考文献

この記事で紹介した書籍

  • 篠田知和基 『フランスの神話と伝承(勉誠選書 )』勉誠出版(2018)
  • シャルル・ギヨ, 有田忠郎 訳『沈める都 : イスの町伝説』鉱脈社(1990)
  • ラ・ヴィルマルケ 編, 山内淳 監訳『バルザス=ブレイス : ブルターニュ古謡集』 彩流社(2018)
  • アナトール・ル=ブラース, 後平澪子 訳『ブルターニュ死の伝承』藤原書店(2009)
  • クードレット, 松村剛 訳『妖精メリュジーヌ物語 : 西洋中世奇譚集成 (講談社学術文庫)』講談社(2010)
  • ジャン・マルカル 著, 中村栄子, 末永京子 訳『メリュジーヌ : 蛇女=両性具有の神話』大修館書店(1997)