神話説話群:ケルト神話の人名語源(アイルランド)

2018年9月10日

バラル Balar

「閃光を発する者」の意。別名バロル(Balor)。1

ブレス Bres

「美しき者」の意。2

本来の名はエオフ Eochu である。ブレス(美しき者)というあだ名は、父親エラタが〈アイルランドの美しいものは全てブレスと比べられるだろう〉と予言したことにちなむ。3

ボアンド Bóand

「白い牝牛」を意味するBo-Vindaに由来。4

bowo-winda-(「白い雌牛」)に由来(2世紀の地理学者プトレマイオスの書いは bououinda という本来の形が見られる)。5

カイル・イヴォルメト Caer Ibormeith

カイルは「球状の塊、滴」、イヴォルメトは「イチイの実」の意。6

ダグダ Dagda

「善良な神」の意。
エオヒド・オラティル Eochaid Ollathair(偉大な父エオヒド)や、ルアド・ロエサ Ruad Rofesa(知に富む偉大な者)という異名もある。7

ディアン・ケーフト Dian Cecht

「迅速に事を運ぶ力の持ち主」の意。8

エトネ Eithne

Eithne の語源的意味は「種子」であり、この名の変形としてはエトナ(Etna)、エドナ(Edna)、エナ(Ena)などがある。9

etla(「清らかさ」)、etne(「クルミ」)、étan(「額」)、etan(「詩」)と関連。(中略)エーダインはエトネと同系の名である。10

ミディル Midir

「粗暴な」の意。ミディルは、碑文に認められるガリアの神メドゥロス Medros に対応すると考えられる。11

モリーガン Morrígain

『コルマクの語彙集』(900年頃成立)によると「夢魔の女王」。後世には「大女王」と解釈された。12

ヌアドゥ Nuadu

「捕まえる者」、「雲を作る者」などの説がある。
アルガドラーウ(Argatlam:銀の手の)という異名を持つ。13

オイングス Oengus, Aongus, Aoughas

Aonghasの語源はゲール語aon(one)+ghus(choice)からなる名前で「選ばれた者」が原義。14

「唯一の選択」の意。15

あわせて読みたい

参考書籍

  • 松村一男, 平藤喜久子, 山田仁史 編 『神の文化史事典』 白水社(2013)
  • 梅田修 『ヨーロッパ人名語源事典』 大修館書店(2000)
  • 松村一男, 森雅子, 沖田瑞穂 編 『世界女神大事典』 原書房(2015)
  • ベルンハルト・マイヤー, 鶴岡真弓 監修, 平島直一郎 訳 『ケルト事典』 創元社(2001)

  1. 松村一男, 平藤喜久子, 山田仁史 編 『神の文化史事典』 白水社(2013), pp.416 
  2. 松村一男, 平藤喜久子, 山田仁史 編 『神の文化史事典』 白水社(2013), pp.458 
  3. ベルンハルト・マイヤー, 鶴岡真弓 監修, 平島直一郎 訳 『ケルト事典』 創元社(2001), pp.199 「ブレス」 
  4. 松村一男, 平藤喜久子, 山田仁史 編 『神の文化史事典』 白水社(2013), pp.490 
  5. 松村一男, 森雅子, 沖田瑞穂 編 『世界女神大事典』 原書房(2015), pp.347 
  6. 松村一男, 平藤喜久子, 山田仁史 編 『神の文化史事典』 白水社(2013), pp.169 
  7. 松村一男, 平藤喜久子, 山田仁史 編 『神の文化史事典』 白水社(2013), pp.308 
  8. 松村一男, 平藤喜久子, 山田仁史 編 『神の文化史事典』 白水社(2013), pp.327 
  9. 梅田修 『ヨーロッパ人名語源事典』 大修館書店(2000), pp.69 
  10. 松村一男, 森雅子, 沖田瑞穂 編 『世界女神大事典』 原書房(2015), pp.339-340 
  11. 松村一男, 平藤喜久子, 山田仁史 編 『神の文化史事典』 白水社(2013), pp.523 
  12. 松村一男, 平藤喜久子, 山田仁史 編 『神の文化史事典』 白水社(2013), pp.541 
  13. 松村一男, 平藤喜久子, 山田仁史 編 『神の文化史事典』 白水社(2013), pp.384 
  14. 梅田修 『ヨーロッパ人名語源事典』 大修館書店(2000), pp.297 
  15. 松村一男, 平藤喜久子, 山田仁史 編 『神の文化史事典』 白水社(2013), pp.146