「ギネス」の語源はアンガス・オグに由来するらしい

2018年6月21日

アイルランドのビール醸造所の「ギネス」が『ギネス世界記録』を出版しているって割と最近気づいたんですが。(遅い……)

◆ ギネス世界記録の「起源」
ギネス世界記録のルーツは、およそ1950年代初頭のアイルランドにまでさかのぼります。ウェックスフォード州で狩猟を楽しんでいたギネス醸造所(当時、現ギネス Guinness & Co.)のCEOのヒュー・ビーバー卿(写真左)の頭に、ひとつの素朴な疑問が浮かんだのです。「ヨーロッパで最も速く飛ぶ狩猟鳥はどれなのだろうか?」と。ふと頭によぎったこの問いをキッカケに、ロンドンでリサーチ業務を行っていたマクワーター兄弟(写真右)に調査および出版が依頼され、世界的に有名な本が誕生することになります。そう、それが『ギネス世界記録』です。
ギネス世界記録とは | Guinness World Records(2018年06月17日閲覧)

アイルランドといえば「ギネス」というイメージは少なからずあると思うのですが、ギネス(Guinness) というラストネームは、アイルランド神話の エインガス(Aongus, Aonghas) に由来します。

エインガスに由来する姓

ギネス GUINNESS

Aonghas の語源はゲール語aon(one)とghus(choice)からなる名前で、「選ばれた者」が原義である。この名前をもつ人物がはじめて書物に登場するのは聖コルンバの時代で、伝説によると聖コルンバはこの名を持つ人物を「長生きをし安らかな死をむかえるであろう」と予言したとされる。
梅田 修 『ヨーロッパ人名語源事典』 大修館書店(2000)

アイルランド神話のエインガス(オイングス、オェングス、アンガス・オーグetc)が安らかな死を迎えたかどうかは寡聞にして知りません。(´・ω・`)

このエインガスという名前から、ギネスという姓になるまでの過程は次のようです。

Guinness はマグ・エインガス(Mag Aonghus)が英語化されてマクギネス(McGuinness)となり、さらにMc-が落ちて成立した姓である。
梅田 修 『ヨーロッパ人名語源事典』 大修館書店(2000)

ヘネシー HENNESSY

また、コニャックのブランド ヘネシー(Hennessy) も、エインガスが由来。

ヘネシー(Hennessy)はゲール語のオヘインガサ(Ó hAonghusa〔原義:アンガスの子孫〕)から変化した姓である。
梅田 修 『ヨーロッパ人名語源事典』 大修館書店(2000)

他にも、神話の由来を持つ人名など調べたら面白そうですね。

文芸復興運動期のアンガス・オグ像

余談ですが、スコットランドの作家 フィオナ・マクラウド や アイルランドの A・E(ジョージ・W・ラッセル George W.Russell) は、アンガス・オグ(エインガス)の出る作品を書いています。

  • フィオナ・マクラウド 「アンガス・オグの目覚め」(“The Awaking of Angus Og”)
  • A・E 「アンガス・オグの夢」(“A Dream of Angus Og”)

フィオナ・マクラウド/ウィリアム・シャープの作品は2018年2月に『夢のウラド』が国書刊行会から新しく出版され、その中に「アンガス・オグの目覚め」が収録されています。フィオナ・マクラウドのアンガス・オグ観があまりに美しすぎる、ような。

過去記事 『夢のウラド F・マクラウド/W・シャープ幻想小説集』フィオナ・マクラウド/ウィリアム・シャープ(国書刊行会)

二人のアンガス・オグ像についての解説は、赤井敏夫氏による「二つのアンガス像」が、『幻想文学』 34号 幻想文学出版局(1992)にありますが、いや本当に……アンガスがロマンチックに描かれていて少し、驚きました。

私の中で、ブルグ・ナ・ボーニャを奪い取った時のアンガスの印象が強すぎるようです。

記事で紹介した書籍一覧

  • 梅田 修 『ヨーロッパ人名語源事典』 大修館書店(2000)
  • フィオナ・マクラウド, ウィリアム・シャープ 著; 中野善夫 訳 『夢のウラド F・マクラウド/W・シャープ幻想小説集』 国書刊行会(2018)