古代アイルランドでは服従の意を示すのに、臣下が王の乳首を吸う?

2018年7月4日

特集:湿地に眠る不思議なミイラ 2007年9月号 ナショナルジオグラフィック NATIONAL GEOGRAPHIC.JP

この記事の中でアイルランド国立博物館の古代遺物管理責任者エイモン・ケリー(Eamonn P Kelly)という人が興味深いことを言っていました。

ケリーの説を科学的に証明することは不可能だが……

 古代アイルランドの王たちは、豊饒の女神と象徴的な婚姻関係にあったという。飢饉は女神が王を見捨てた証であり、何とかして女神の怒りを静めなければならなかった。湿地遺体は神に捧げる重要な供物で、生け贄とされたのは王位を狙うもの、あるいは失脚した王自身だったかもしれない。豊饒、王権、戦争など、女神が司る様々な面を賛美するために、傷つけられる体の部位は決まっていた。「正確に計算して傷をつけたのです。彼らは女神にふさわしい贈り物を捧げました」とケリーは言う。

 髪と爪の分析から、オールドクロウハン人は普段は肉を食べていたことがわかっている。しかし、腸にあった残留物からは、最後の食事は穀物とバターミルクだったと判明した。豊かさを象徴するこれらの食べ物は、豊饒の女神への生け贄にふさわしい。また、彼の乳首は死後に切りとられており、失脚した支配者だった可能性があると、ケリーは推測する。古代アイルランドには、臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったからだ。遺体は切り刻まれ、王国の境界付近にばらまかれた。腕の穴にハシバミの輪を通したのは、領土を守るための魔法をかけたからかもしれない。
 特集:湿地に眠る不思議なミイラ 2007年9月号 ナショナルジオグラフィック NATIONAL GEOGRAPHIC.JP

古代アイルランドには、臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったというのに驚いたのですが、聖パトリックの著作『告白』(Confessio)で書かれている、アイルランドから脱出する時の船乗り達とのやりとりでそんな話がないわけでもない……っぽい。

聖パトリックの『告白』は、Saint Patrick’s Confessio Hypertext Stack Projectで読むことができます。

該当箇所は¶18。(太字は引用者)

18
The day I arrived, the ship was about to leave the place. I said I needed to set sail with them, but the captain was not at all pleased. He replied unpleasantly and angrily: “Don’t you dare try to come with us.” When I heard that, I left them and went back to the hut where I had lodgings. I began to pray while I was going; and before I even finished the prayer, I heard one of them shout aloud at me: “Come quickly – those men are calling you!” I turned back right away, and they began to say to me: “Come – we’ll trust you. Prove you’re our friend in any way you wish.” That day, I refused to suck their breasts, because of my reverence for God. They were pagans, and I hoped they might come to faith in Jesus Christ. This is how I got to go with them, and we set sail right away.

「胸を吸う」ことを拒否していますね。この部分にThe practice of symbolically coming under the protection of another by sucking the breast was known in North Africa, Ethiopia, Egypt, Turkey, Armenia, Caucasus region, Albania, as well as Ireland.という注釈があって、胸を吸う行為により誰かの保護下になるという習慣はアイルランドでよく知られている、のでしょうか……。

王になるのも大変だなぁ……(´・ω・`)

蜂蜜酒で溺死させられる王

話のついでですが、マグロンヌ・トゥーサン=サマの『世界食物百科』(1998)には古代アイルランド・ケルト人は、先王が失脚すると敬意を込めて蜂蜜酒の入った桶で溺死させ祖先のもとに送ったという話が載っていた。でも、この話の出どころが分からなくて困っています。

Diarmait mac Cerbaill、Muirchertach mac Erca の話をしてるのかなあ……と、いつか真面目に調べてみたいと思います。

記事中で参照した書籍とサイト

書籍

  • マグロンヌ・トゥーサン=サマ; 玉村豊男 訳 『世界食物百科』 原書房(1998)

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