【読書記録】『アーサー王ここに眠る』フィリップ・リーヴ(東京創元社)

どうも!櫟野もり(@1no_mori)です。

フィリップ・リーヴ『アーサー王ここに眠る』(原題:Here Lies Arthur)を先週、読了しました。ミルディンがめちゃくちゃ私の好みすぎて、もう無理しんどい……を実感してしまった。
Twitterでひたすらミルディンしか言っていませんでした。
ほんとに気に入ってしまったので原著(英語)をハードカバーとKindleでも買って、再び堪能中っていう感じ。

『アーサー王ここに眠る』の内容紹介

東京創元社のページから引用します。

ブリテン島、紀元500年頃。ひとりの司令官に率いられた騎馬の男たちの集団が館を襲い、火を放った。燃えさかる館から、命からがら逃れたみなしごの少女グウィナは、奇妙な風体の男に救われる。鷹のような風貌のその男の名はミルディン。ブリテン島の統一を目指す司令官アーサーに仕える吟遊詩人。グウィナはミルディンのもとで、彼の企みに手をかすことになる。アーサー王伝説を新たな視点から語りなおした、カーネギー賞受賞の傑作。本文挿絵=羽住都/訳者あとがき=井辻朱美アーサー王ここに眠る – フィリップ・リーヴ/井辻朱美 訳|東京創元社

この物語は、アーサー王伝説、従来のものとは全然違います。(私自身はアーサー王伝説にあんまり明るくないですが……)
なんてったって、私たちが知っている「アーサー王の物語」はミルディンが作り出す「虚構」として描かれている。

アーサーは略奪ばっかりしてる、野心家で、熊のように強いけれど高潔とは全く言い難い男として描かれている。
ミルディンは、悪魔と人間との間の子どもだとか、魔法が使えるとか人々に噂されているけど、ただの「吟遊詩人のミルディンさま」です。

……実は、この話のあらすじだけは読む前から知っていました。

物語の力―『アーサー王ここに眠る』における「虚構」と「真実」―
新居 明子
名古屋外国語大学論集 = Bulletin of Nagoya University of Foreign Studies (1), 25-43, 2017-07

こちらの論文を読んで、翻訳された物語を読んで、その面白さときたら。

なかでもミルディンが私のお気に入りです。主人公はグウィナ(グウィン)なのですが、ミルディンはいろいろずるい奴でしたよ。

訳文がとても読みやすいし、面白い

翻訳の妙がすばらしかった。私がこんなにミルディンのキャラクターに惹かれたのは、絶対に、訳文のせいでもあるw

たとえば原文では、”I am Myrddin. The bard Myrddin”という自己紹介。
これが、「ミルディンという。吟遊詩人のミルディンさまさ。」と訳してある。
自分で自分のことを「偉大なミルディンさま」と言うところもある。

グウィナに手品をしてみせるときは、

“It’s only a trick, girl. Look close.”
「娘、いまのはただの手品だよ。よっく見な」

よっく見な、のところ。この小さな「つ」が大事です。何を言われようが、この小さな「つ」があるかないかは大切なことなのです。

もうね……悪いやつじゃないんだけれど、ペテン師っぽい。日本語のうさんくさい口調が完璧にツボでした……。「おれさま」って何なの……。
日本語って自分を指す代名詞の数が多いので、しかもその「名詞」に対するイメージがあるので、おれさまだの、ミルディンさまだの言わせたのは個人的には「素晴らしい」としか言いようがないです。
主人公の一人称で語られるのですが、見事な訳文によってキャラクターが生き生きとしています。ぐいぐい引き込まれてしまった。

ミルディンとか、ミルディンとか、ミルディンとか。(しつこい)

少年と少女を行き来する主人公・グウィナ

ミルディンに手を貸すことになる少女・グウィナは少女と少年の間を行き来します。
10歳程度だったと思われる少女、グウィナは少年グウィンとしてアーサーの軍に加わります。そして男の子たちの中での生活で、その社会でのしきたりとかを学ぶ。

しかし、女であることを誤魔化すことができなくなる年齢に近づくと、今度は少女として、アーサーの妻グウェニファーの侍女となります。
(有名な荷車の騎士ランスロットは出てこないですが、一応ちゃんとその話はあります)

グウィン/グウィナが男女間を行き来するように、元々の伝説でも、女として育てられていたペレドゥルが登場します。グウィナが、ペレドゥルにもう一人の自分を見つけたような気になる……というところは、少女恋愛っぽい部分もあるかな。

ミルディンの、グウィナに対する気持ちが語られるところでは号泣してしまった。そして、今、この部分書きながらパソコンの前で思い出しながら泣いてます(ガチで)。

感想まとめ

アーサー王伝説について知らなくても、かなり面白かったです。だってうーっすらと知ってるアーサー王のキャラクターとはぜんぜん違った。

みんな「英雄」じゃなく、生身の人間。
生身の人間がやったことが、物語として誇大され、時には歪められ、語られ、人々の間に広まっていく。その「物語」をこそ人々は信じている。

人は信じたいものを信じるように出来ている。

もちろん虚構だけれど、嘘なんだけれど。物語は「希望」を与えてくれもするのです。

そんな話。あー面白かった。原著、英語だけど頑張って読む……読むんだ……。

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櫟野もり(Ichino Mori)

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