アイルランド神話人名メモ

2017年11月11日

たまに増減する自分用アイルランド神話人名メモ。興味のある人物しか残してません、すみません。
アーサー王伝説もちょこっとだけ置いてます。

神話説話群

オインガスAongus, Aoughas

愛と若さの神。ディルムッドの養父。
Aonghasの語源はゲール語aon(one)+ghus(choice)からなる名前で「選ばれた者」が原義。
アンガス(Angus)という名前はアイルランドやスコットランドに多い。

カイル・イヴォルメトCaer Ibormeith

カイルは「球状の塊、滴」、イヴォルメトは「イチイの実」の意。
『オイングスの夢想』に登場する女性の名で、オイングスの恋人である。 (『神の文化史事典』)

ディアン・ケーフトDian Cecht

「迅速に事を運ぶ力の持ち主」の意 (『神の文化史事典』)

ミディルMidir

「粗暴な」の意。ブリー・レイト(灰色の男の塚)という巨石塚を住まいとする。
ミディルが所有していた三羽の鶴は、吝嗇と不親切の象徴とされる。

オイングスの養父であり、『エーダインの求婚』の主人公。(『神の文化史事典』)

ボアンドBóand

「白い牝牛」を意味するBo-Vindaに由来。
アイルランド東部を流れるボイン川の名祖。エルクワル(またはネフタン)の妻。また、ダグザの恋人ともされる。アンガス・オグの母。 (『神の文化史事典』)

ブレスBres

「美しき者」の意。 (『神の文化史事典』)

バラルBalar

「閃光を発する者」の意。別名バロル(Balor)。
アイルランド神話に登場するフォウォレであり、ルーグの祖父。 (『神の文化史事典』)

ダグダDagda

「善良な神」の意。
エオヒド・オラティル Eochaid Ollathair(偉大な父エオヒド)や、ルアド・ロエサ Ruad Rofesa(知に富む偉大な者)という異名もある。 (『神の文化史事典』)

ヌアドゥNuadu

「捕まえる者」、「雲を作る者」などの説がある。
アルガドラーウ(Argatlam:銀の手の)という異名を持つ。 (『神の文化史事典』)

モリーガンMorrígain

『コルマクの語彙集』(900年頃成立)によると「夢魔の女王」。後世には「大女王」と解釈された。 (『神の文化史事典』)

赤枝説話群

ブリクリウBricriu

「多色の」「色とりどりの」を指すアイルランド語breccと関連付けられる。
アイルランドのアルスター説話群、『ブリクリウの饗応』などに登場する。「毒舌」の異名を持つ。 (『神の文化史事典』)

コナルConall

「狼のように強い」という意味の名前であり、伝説では赤枝騎士団でクー・フリンと1,2を争うほどの英雄である。

コンホヴァルConchobar

1世紀に生きたとされる伝説の王、赤枝騎士団の中心的人物。
ク・ホリンの伯父でもあり養父でもある。アイルランド叙事詩によるとアルスター王コンホヴァルは若いク・ホリンを養子にした。

Conchobarの-chobarは「愛する人」という意味で、この名の原義は「猟犬を愛する者」である。Conchobarは英語化されてコナー(Connor)となるが、コン(Con)やコニー(Conny)はその愛称形。

コンラConnla , Conlaoch

クー・フリンの息子。クー・フリンがゲイ・ボルグで殺したうちの一人。
【Conlaoch】を引くと「From conn “chief” + laoch “hero” meaning “highest chief.”」とあったので「最高の首領」というところだろうか?

(多分、百戦のコンの息子、『コンラの異界行』の主人公の方のイメージが強いと思う……。)

『神の文化史事典』では「偉大な君主」「偉大な首領」の意か。となっている。

クー・フリンCu Chulainn

ク(Cu)は、狼狩りに使われる勇敢な猟犬(wolfhound)という意味の言葉である。

ク(Cu)は、アイルランドで特に好まれる名前の要素であり、ク・コナハト(Cu Chonachat:コナハト人の猟犬)とかク・モイ(Cu Maige:平野の猟犬)のように、氏族名や地名などとともに名前を構成した。従ってCu Chulainnは「クランの猟犬」という意味になる。

クランはアイルランドのアルスター神話群に登場する鍛冶屋の名。
また、ConはCuの属格形であり、アーサー・コナン・ドイル(Arthur Conan Doyle, 1859-1930)のConanはConの愛称形。

【余談】 フィアナ(Fianna)伝承群の、フィアナ騎士団の一員で、冥府で悪魔に打たれても仕返しを忘れなかったという豪傑コナン(Conan)が登場する。

エウェルEmer

クー・フリンの妻の名。

もしかしたらという話だが、古ゲール語のeimh(swift:アマツバメ)と関係する名前ではないかと紹介するサイトもある。 (Behind the Name: Emer

フェル・ディアズ・マク・ダワーンFerdiad (also Fer Diad, Ferdia, Fear Diadh) mac Daman(Daire)

「二人組の一人」。
あるいは、「煙の男」と解釈することも可能な名前。(『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン著 東京創元社)

ファーガス・マク・ロイフFergus mac Roich

アルスターの英雄であり、アルスターの王。
巨人のような体格をし、700人力で、一食に7頭の鹿と7頭の豚と7頭の牛、7つの大桶の酒を平らげたとされる。

虹のように延ばせる魔法の刀をもっていた。

ファーガス(Fergus)は、ゲール語ではファリース(Fearghas)。
Fear(man)+gus(vigor:力)からなる名前であり、「勇者」や「強者」を意味する名前。Fearはラテン語vir(男)と同族の言葉であり、男性原理を意味する言葉でもある。

ついでに言うと精力絶倫である。

イヴァル・マク・リアンガブラIbar mac Riangabra

『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン著 付録の注に「イヴォル(イヴァル) 「イチイの樹」を意味する名前」とある。

ロイグ・マク・リアンガブラLoeg mac Riangabra

『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン著 付録の注に「ライグ(ロイグ) この名前は「子牛」を意味する」とある。 リアンガブラについては調査中。

ノイシュNaoise

ウシュリウの3人の息子の中で最年長、デルドレの恋人。

It is taken as the Gaelic form of Noah. 「ノアのゲール語での形から来ている」 『Irish Names for Children』 Peg Coghlan著

という説明があるけど、他にも「one choice」とか「Connection」「bond(?)」……というものも見かけるため、調査続行。

白水社『神の文化史辞典』では「尊敬されている男」の意。「名声」を指す nos の属格第二形。と説明されている。

デルドレDeirdre

「危険」の意。古い語形はデルドリウ(Derdriu) (『神の文化史事典』)

シェーダンタ/セタンタSetanta

クー・フリンの幼名であり本名。
意味は「道を進んでいく者」を意味する。(ブリトニック諸語の「道」という名詞が認められる) 『ケルト文化事典』ジャン・マルカル(著) 金光仁三郎/渡邉浩司(訳) 大修館書店

プトレマイオスの記述によれば、この名前は、今日のイングランドのランカシャーにあたる地域に住んでいた、ケルト系部族のシェダンティ族《Setantii (also Segantii or Sistuntii)》とおそらく関係がある。シェダンティ族の一団がアイルランド海を越えて、ラウズ州に住みついたのかもしれない。彼らには、部族名の起源となったセントノティウスという神がいたと考えられているが、その神の名は「道を行く人」を意味するので、「小径」または「道路」を意味するシェトからシェーダンタが派生したと考えても不自然ではない
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン著 東京創元社

ちなみに、もし(ブリトニック語でなく)ゲール語であれば Seteta であったはず、らしい。「ケルト諸語とその歴史に関するこれまでの見方と新しい見方 : ブレイス語の事例」『ケルティック・フォーラム』 (17), p.2-11

スカータハScathach

「恐怖を与える者」の意。
アイルランドのアルスター説話群に登場する女戦士。 (『神の文化史事典』)

アリルAilill

「幽霊」の意 (『神の文化史事典』)
コナハト女王メーヴの夫。

フィアナ説話群

コーマック・マク・アートCormac mac Airt

タラの支配者で上王。上王とは、アイルランドにある時代には200以上もあった部族の王たちの上に立つ王のことで、タラのドルイド僧たちに儀式によって決められた。

Airt は Art の属格形で、その意味は「熊の」である。

ケルト人には古くからアルティオ(Artio)と呼ばれる豊穣の女神に対する信仰があり、熊は豊穣と戦いの象徴であったことがわかる。
コーマック(Cormac)はアイルランドでは十指に入るほど人気のある名前で、corb(ワタリガラス)とmac[son]からなる名前と考えられている。

ディアルミド・ウア・ドゥイネDiarmuid Ua Duibhne/Diarmid O’Dyna

Dermot 或いは Dermod Diarmait Diarmaid等とも綴られる。

名前の意味を紹介しているサイトや本によって、”free of envy”, “without injunction” “a freeman”……等と色々あってはっきりしていない。
ただ、以下の要素 di(withoud) + airmit(injunction) からなる名前と解説している本もある。愛称形はデリー(Derry)である。

ディアルマッドは、ときにはディアルマッド・ドヌ(褐色の、どす黒い)として知られ、ときにはドヌの息子のディアルマッドとして知られており、彼はもとはアイルランドの死者の国を支配した神のドゥンと同じだったと、強く推定する説もある。 『ケルト神話』 (プロインシァス マッカーナ 著 松田 幸雄 訳 青土社)

『神の文化史事典』では「忘却」の意とある。

フィン・マクールFinn mac Cumhaill

フィン(Finn)やフョン(Fionn)の意味は「白」であり、白はドルイドを象徴する神聖な色であった。フィンの父クール〔Cumhaill:空〕はフィンが生まれる前にこの世を去る。

【余談】アイルランド独立運動の中心的勢力となったフェニアン団(Fennian Brotherhood)はフィアナ騎士団にあやかる名前である。

「美しき者」フィンと「輝ける者」ルーグの伝説のあいだには、他のさまざまな類似があり、フィンがもとは神ルーグの別名だったかもしれないと――信じられないこととしてではなく――提案されているのである。『ケルト神話』 (プロインシァス マッカーナ 著 松田 幸雄 訳 青土社)

グラーニャGrainne, Grania

From gran “grain, corn.” ……穀物。豊穣を意味するようです。

『ケルト文化事典』(ジャン・マルカル)では「太陽」と解説している。ただ、『ケルト事典』(ベルンハルト・マイヤー)では「醜い女」が原義であるとしている。

【保留】ただ「graidh “love”」の語としばしば関係しているともされるようで、愛という意味も持っているかも。(Behind the Name: Meaning, Origin and History of the Name Gráinne

グラーニャの場合は、彼女の名前がおおいに意味をもっているように見える。字義的には「醜悪」あるいは「嫌悪の情を催させるもの」の意味をもつことによって、グラーニャは宿命の相手と結婚することにより並ぶものなき美人に変身した忌まわしい魔女として、かつては知られていたのではないかと思われる。 『ケルト神話』 (プロインシァス マッカーナ 著 松田 幸雄 訳 青土社)

アーサー王伝説

アーサーArthur

中世ラテン語では アルトリウス(Artorius)。
ケルト的な名前だが、その語源ははっきりしない。(伝統的にブリトン人の言葉arth(熊)とか、アイルランドのゲール語art(熊)と関連付けられてきた)

アイルランドで、オ・ネール家やオ・ブリアン家の先祖とされるタラの伝説的上王コーマック・マク・アート〔Cormac Mac Airt〕のAirtはArtの属格形であるが、このArtは英語でArthurと訳された。ラテン語的ArtoriusからArthurと綴られるようになったのはルネサンス期のことで、ギリシャ的風格をもたせるために-th-という綴りが挿入されたもののようだ。

由来に関する議論がとても多いので詳しい事は【保留】。

アーサー(Arthur)の名前については、ケルト語起源ではなくローマの氏族名アルトリア(Artoria)の男性形アルトーリウス(Artorius)に由来するという説が有力だ。「ウェールズ伝承文学におけるアーサー物語の位置づけ」『アーサー王物語研究 源流から現代まで』中央大学人文科学研究所編

モードレッドMordred

名前に含まれるMorを「海」と解釈する説がある。 (『神の文化史事典』)

ガウェインGawain

語源については異論があるそう。(またか)

『ヨーロッパ人名語源辞典』によると、ケルト語起源のgwalch(hawk:鷹)+gwyn(white:白)からなる名前なので白い鷹とされている。

『神の文化史事典』によると、ウェールズ語で「五月の鷹」の意。語源的には神話的巨人ガルガン(Gargan)の名に認められる garg や galg と関連付けられる。と説明されている。

ランスロットLancelot

「ルグの槍」、「ロット(川)のアラン」、「小さな召使」などの説がある。(『神の文化史事典』ランスロット項)

さらにこのランスロのルーツをつきつめると、古ケルトの神、魔法の槍をもつリュグ(ルフ)にたどりつくのである。『騎士と妖精―ブルターニュにケルト文明を訪ねて (音楽選書)』中木 康夫著 音楽之友社

マーリンMerlin

マーリンはウェールズ語ではMerddin、-ddの発音は[l]に近かったことから中世ラテン語ではMerlinusとなり、今日の英語名Merlinになった。
ウェールズ語Mer-は、近代英語のmere(sea)と同族の言葉であり、-ddinはHiltonの-tonやtownと同族のdun(hill,fort)と同系の言葉で、この名の意味は「海の要塞」(seafort)である。

参考図書
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櫟野もり(Ichino Mori)

ゲームばかりしながらアイルランド神話関係の雑記を書いたりしている。
今やってるのは「FGO」と「FF15」。

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